水素エネルギーの循環システム
褐炭より水素を採る
オーストラリアのヴィクトリア州には、多量の褐炭が眠っている。その量は、なんと日本の消費する全エネルギーの約240年分に相当する膨大なものだという。
褐炭とは、炭化度の最も低い石炭で、水分を60%も含み、燃焼時には多量の煤煙と臭気を発する。つまり燃料として使用する今までの利用方法にはあまり適さない。しかも乾燥すると露出部分が空気中の酸素と反応して自然発火し、何年にもわたって大地がくすぶり続けることもあるという。
このオーストラリアの褐炭に目を付けたのが、日本の川崎重工である。同社は現地で褐炭から水素を採取、液化し、日本まで大型液化水素運搬船で運び、さらに小型液化運搬船小分けし、陸上輸送を経てタンクに貯蔵し必要量を小出しに使う一連の水素エネルギー循環システムを構築しようとしている。
すでに、JAXA種子島宇宙センターに設置された液化水素貯蔵タンクは、我国が誇るH2ロケットの燃料として、欠くことができず、すでに25年前から使用されている。(Kawasaki Hydrogen Road HP より)
LNGより水素を採取
また、千代田化工建設は、ブルネイのLNGより抽出した水素をトルエンに反応させて、メチルシクロヘキサン(MCH)という物質を作り、日本に到着後にはメチルシクロヘキサンから水素を分離する。そして、水素が抜けたトルエンを再びブルネイに向かって出航する。
水素エネルギーの受け入れ態勢
ブルネイの水素化プラント、また受け入れ側には、川崎市臨海部の脱水素プラントの建設に2017年8月から着手し、2019年にこのプラントを完成させ、さらに2020年からブルネイで調達した水素を常温・常圧下の液体で日本まで海上輸送し、気体の水素に戻して利用者に供給することを予定している。(NEDO 国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構 HPより)
液体水素の体積は、気体の1/800
水素は、-253℃の極低温にすることで、気体から液体に変わり、体積が1/800に減少する。
川崎重工や岩谷産業はLNGやLPガスを昔から開発、運送しており、冷却輸送に対して蓄積したノウハウがある。
水素採取の問題点
しかし、そこには何の問題もないのであろうか。
例えば、褐炭から水素を取り出す際にはCO2が発生する。川崎重工はそのCO2を地中深く沈めて、大気に放出しない方針であると聞く。専門家でないのでよくわからないが、例えば、毎日毎日発生するCO2を何年も何十年もの間、大地に埋めて弊害は出ないのだろうか。
【安生 正氏の小説「ゼロの激震」】のように、地中に埋めたCO2の影響で火山を誘発したり、あるいは何らかの悪影響を及ぼすことはないのだろうか。
また、ベンゼンは人体に有害であり、発癌性があることが、WHOの下部機関IARCより勧告されている。(wikipediaより)
言うまでもなく、千代田化工建設やNEDOはそんなことは百も承知で、ベンゼンが漏れ出さないよう万全の策を講じていることだろう。
素人が心配することではないが、本格的に水素エネルギーを活用し、原発や火力発電に取って代わるには、まだまだ道のりは遠い。